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手記4

メールによる支援で再登校した遠隔地の小学6年生のケース


 それは、私にとってはあまりにも突然の出来事でした。それまでほとんど学校を休む事すらなかった長男が、6年生に進級して間もないゴールデンウィーク中に、身体の不調を訴え、学校を休みました。 それどころか、休日に友達が誘いに来て喜んで遊びに出ても30分しか身体がもたない、家族で外出しても「しんどい」と言ってぐったりしてしまう。 これは大変と、かかりつけの医院で診察を受けた結果、特に身体に異常は無し。総合病院での受診をと話を進めていた時に、本人が「身体は大丈夫。もう病院には行かない。」とはっきりと答えたのです。

 では原因は何なのかと尋ねると、本人も「何だかしんどいだけで、何が原因なのかわからない」との事でした。 ただ、4月の始業式の日に、新しいクラスに親友がいない、担任も嫌だと愚痴をこぼしてはいたけれど、親としてはそんなことでと喝をいれたのが・・・。 すぐさま学校の担任と連絡を取りましたが、学校では変わった様子はなく、友達からいじめらているとも考えられないとの事でした。 ちょっとした5月病のようなものならばと、登校を促すものの、以前の長男とは打って変わって、遅刻か早退をしながら何とか登校する状態が続きました。 それも、5月末の修学旅行には行きたいという願望だけでがんばる登校でした。行動もおどおどしたり、決断力がなく、まるで人が変わってしまったようでした。 習い事すら理由なく休む事を許さず育て、簡単に学校を休むなんて考えられないはずなのに、自分から塾に行きたいと言って何人もの仲間と一緒に勉強をがんばり、親の躊躇をよそに中学受験をすると言っていた子が、一体何が原因で・・・自問自答の日々が続きました。 これまでの子育て、家庭自体すらも間違いだらけに思え、過去を振り返っては落ち込むばかりでした。

 そんな中、学校の紹介で市の教育相談に行く事にしました。 そこで受けたカウンセリングは、「とにかく子供さんを受け入れてあげましょう」「お母さんの辛さはここで吐き出してください」と言うものでした。 2週間に1回、思いの丈を吐き出しては少し気が軽くなって帰るの繰り返しでした。 たまたま近所の友人で、子供の不登校を経験した人が2、3人いましたので、私の心のケアを補ってもらったり、他にも精神科医の話を聞いたりし、皆に受容、待つことの大切さを説かれながら、私が変わらねばと言う思いで一杯になっていきました。

 しかし、修学旅行を終えた後、更には家族で子供の気持ちの受け入れを始めた頃から、長男は本格的に学校に行けなくなっていきました。 昼間一人で悶々とし、「お母さんごめんね」などと言ってくる息子に、「学校でなくてもやりたい事見つけようよ。フリースクールは?野球は?」等と言った事もあります。 子供はどこにも動こうとはしませんでした。私自身も目指す仕事が起動に乗り出したところで必死でしたので、思い切って休みを取っては、「お母さんだって休みたい時もあるのよ。 ぱあっと遊びに行こう。あなたは堂々としていなさい。」と精一杯の見栄を張り、平日に外に連れ出したりもしました。 でも余計に私の心の中では、本当は学校に行くべきだ、行って欲しいと思っているのに本音を隠し、いつ抜け出すかもわからないトンネルの中に何年もいるのは耐えられないとの思いと、待つべきとの思いが日々交錯していました。

 市の教育相談では、「何年掛かろうが、待ってやる事が将来の子供のため」「むりやり登校させてもまた同じ事になる」と言われていたのです。 その頃思いついたのが、「インターネットで不登校情報ばかり探していたけれど、登校しましょうと言う情報はないのか」という事です。 検索を始め目がひきつけられたのが、心理学でも行動療法という理論を使った「再登校指導」と言う言葉でした。 すぐにネットで見つけた「不登校-再登校の支援-」という本を取り寄せ読みました。今まで何冊となく読んできた不登校関連の本とは違い、子供を再登校させるまでの実践が詳細に書かれていました。 中でも、我家と同じ年頃の男の子を立ち直らせたお母さんが、今の私の様に待っている間の事を回想して、「何だか変だ。私がしてきた子育てとは違う。・・・どこか無理をしているような不自然さを感じ続けていた。」との一文を読んだ時には、全く同じ思いをしていた人がいたんだと涙がでて来ました。 この本の著者であり、その子の再登校支援をしたカウンセラー桜井先生に会いたいとの思いが募りました。 でも現実には、関西に住んでいる私にとって広島までは遠く、費用も掛かる、これまでの待てという指導と180度違う為、果たして我が子に合うかどうか、二の足を踏みました。

 子供はと言うと、夏休みも近づく頃には、家で暇だと言いながらも学校は行ってもいい事がないとゲームばかりして過ごし、たまの学校行事の時だけ戸惑いながら参加、午後、学校から帰った友達が上手くつかまれば遊ぶという生活。 夏休みに入ると、少し積極的になり自ら朝のラジオ体操に参加して、友達と遊ぶ約束を取れつけて来たりしました。 まだまだ以前の息子とは違う、のびのびしていない、でも、この子は本当は学校に行きたい、友達が好きなんだ、との思いが私の中で強まっていました。 思い切って広島に行こう。心に決めたのは、8月の初旬でした。2学期になっても、1学期と同じ生活はしたくない、運動会や遠足に参加し、思い出を増やしてやりたいとの思いからでした。

 桜井先生に会ってまず思った事は、何てバイタリティー溢れた人なんだろうと言う事。今まで見聞きしてきたカウンセラーの先生とは、印象が違いました。 そして、私がこれまでの経過をお話すると、「小学生の典型的な不登校(昨年、管理教育のきつい担任だった事など)。お母さん、あなたの子育ては間違ってなかったんですよ。 今まで通りのお母さんに戻りなさい。」と言ってくれました。この4ヶ月間、我が子でも感じたままに物を言うことすら出来ず、常に頭で言葉をのみ込んでから話すロボットのような自分がいたのです。 回りの多くの人に「お母さんがドンと構えておかなければ」とアドバイスされ、私もそう思うもののそうする事が出来なかった。自分の中に罪悪感があり、待つべきだとの考えも否定できなかったからです。 それが桜井先生と話していると、不思議と勇気が湧いて来ました 「お母さん自身がカウンセラーになれるかどうか、今から1週間、毎日、30分間一緒に机に座ってみる事から実践しませんか。」と言われました。  体調不調を訴えた5月以来、勉強と言うものを一切せず、ゲームかテレビ漬けの日々を送って来ている息子に「勉強しよう」と言えるかどうか。

 2日躊躇して、話を持ち掛けました。意外に反応してきて、内容は兎にも角にも毎日、実践できたのです。 そうするうちに本好きだった息子が4ヶ月ほったらかしにしていた文庫本を読んだ、工作を作ったと、嬉しい事実も見られるようになってきました。 そして、桜井先生に遠隔地ながら電話・メール等での指導をお願いする事に決心しました。 それでも登校の事は、なかなか口に出来ませんでした。いざ口にすると口論になったり、子供から「学校はいかへんで」と言われ落ち込んだりもしました。 その度に先生に連絡を取り、どう子供に答えたらいいのか実践的にアドバイスをいただきました。 そしていよいよ2学期が始まり、初日は親が思う以上に良い滑り出しだったものの、二日目は登校できないとの事。 「じゃあ出来るところまでやろう。」と、学校の門までならと言う息子を連れて、学校まで歩き、門に出て来てくれた担任に挨拶をして、帰路につきました。

 休んだ日は、学校の時間割と同じ様に過ごすというのも実践。そうするうちに9月2週目にはほぼ登校となりました。ところが登校したらしたで、以前では考えられないような事が次々に起こりました。 学校で気に入らない事があり、運動会に参加しないと言ったり、友達と口論をして学校を飛び出してきたり。 その度々に24時間体制で、「事件にぶつかるほど回復が早いです。」等、電話で励まして頂き、母親が戸惑わないよう休んだ時の言葉をシュミレーションしておくなどのカウンセリングも受けました。 9月の下旬には、徐々に私の方も受け答えのコツをつかむことが出来、子供も安定してきたかのようでしたが、家の中では「しんどい」「疲れた」が口癖のような長男に、私に別のストレスが高まっていきました。 無理をさせているのだろうか?

 そんな時に桜井先生から実際に再登校に成功した先輩お母さんを紹介されました。 電話でお話をすると、私の今の気持ちをよく理解してくださり、今は殻に閉じこもったままの登校でも、自分からの登校に変わった時は見違える事、それには苦しいけれど1年くらいはかかる事を話して下さいました。経験者の話だけに納得できる部分が多く、一足飛びを期待してしまっていた自分を反省したりしました。そして、実際に子供が登校を渋った日でも、「じゃあ、今日はどこまでだったらできる?」等、出来る事をやる、時間の長さよりも回数行く事が大切との桜井先生の言葉を実践するうちに、本当に子供が少しずつ変わってきました。10月には100%登校をしています。 まだまだ山を越えたとは言えません。朝起こしに行くと、「今日は休む」とよく言います。「そうする?」と私。 後は黙って朝食の用意をしていると、登校の準備をしている息子がいます。 心は裏腹な気持ちを持っていても、行動することでプラスに気持ちが変わっていく、それが行動療法なのかなと今は理解しています。

 もし、私が桜井先生と出合っていなければ、今でもひたすら待つを実践し、日中に息子と二人、家の中で悶々としていたかも知れません。 実際には学校に行きたいとの思いを心に秘めている子供と、学校に行くべきだとの思いを秘めている親なのにです。 そう思うと、今、我が子に小学校最後の運動会を経験させてやれる事が出来た事、もっと小さな、クラスの子と一緒に今日の授業が受けられた、給食が食べられたそんな一つ一つがかけがえのないものに思えます。 数ヶ月前まで、どちらかというと行動派の自分が子供の不登校に直面し、内にこもり、孤独感にさいなまれていました。 あの時、行動して良かった。そして、桜井先生を始め、リブ教育研究所の皆さんが24時間態勢で遠隔地の私を支えてくださった事、人との出会いを感謝しております。 これからもご指導よろしくお願い致します。

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