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リブ通信


代表カウンセラー  櫻井 久仁子

 リブ通信は、忙しく時間に追われる日々の中で、ふと心に語りかけてくるような日常の小さな気づきを思うがままに書き綴る・・・、まさに櫻井の独り言である。 元旦に『今年は気の向くままに文章を書いて見る』と放言した手前、改めてリブ通信のページを開く事にした。



『清々しいやさしさ』

 寒い冬の朝、車から降りる少女を見守る1人の少女がいた。かじかんだ手に白い息を吹きかけながら穏やかにたたずむ少女が、硬い表情で車から降り立った少女に軽く微笑むと二人の少女は静かに校舎の中へと消えていった。
 恐らくその少女は学校へ来にくくなった友達を待っていたのだろう。だが、「待っていた」と声を掛けるわけでもなく、「頑張れ」と励ますわけでもない。ただ待ち共に歩む、なんと清々しいやさしさなのだろう。そして車から降りた少女もまた友達のやさしさを噛み締めながら一歩を踏み出す、なんと清々しい勇気なのだろう。  この日私は二人の少女から大切な事を学ばせてもらった。カウンセラーを生業としている私は、時として『支援』や『指導』、『援助』という言葉を多用し、ひとり悦に浸っているのではないかとの思いが浮かんできた。この日は私にとって、足し算でもなく引き算でもなく、この少女のように共に歩くことの大切さをもう一度心に刻んだ朝でもあった。
 不登校になるということは、家と学校という当たり前の日常がある日突然機能しなくなり、不安や恐怖、様々な感情の渦に飲み込まれ「学校へ行く」という昨日まで出来ていた動きが取れなくなることである。確かに怠惰で学校を休む子どももいるだろう。しかし、ズル休みも休みが重なれば学校へ行く事はかなりのプレッシャーである。きっかけは何であれ、学校へ行けなくなるということは子ども達にとって尋常な事ではない。
 そして不登校の子どもが再度登校する事はもっと大きな苦しみの連続である。「もう一度学校へ行こう」と決心し家を一歩出る。しかし、「行きたい」気持ちと「行けない」気持ちの狭間で見る学校は文字通り大きな壁となって折れそうになった心に覆いかぶさってくる。私達はそうした子ども達と日々学校へ戻る戦いをしている。恐怖でカチカチになった身体で進む一歩は小さくても、一歩進めた事は大きな成功のあかしだと信じて朝を迎える。
 もし私自身が挫けそうになった時、冬の朝出会った『清々しいやさしさ』を思い出し、私の心に火を灯そう。私が今この時を頑張れる火を。

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