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河合伊六教授 子育てのコツ(その1)

そったく(いっぽ&一歩) 通信 創刊号によせて 2001年

親の後ろ姿を見せるだけでは子どもは育たない

 しばらく前のことです。「子どもは親の後姿を見て育つ。親がまず生活を改めねば・・・」という主張や、「子どもは親が云うこと(お説教)は聞かなくても、親のすること(行為)はする」という言葉が盛んに語られました。
子どもは親といっしょに生活しているあいだに親を見習って成長していくというのです。
 そこで「親がまず良いモデルを示す事が大切だ」、「子どもを変えようと思うのなら、まず親の方が自分の毎日を反省して、自分の生活態度を変えなければ・・・」とやかましく云われました。 たしかにその通りでしょう。

 アメリカの心理学者バンドューラも「子どもは他の人がある行動をしているのを観察するだけで、自分が実際に行動しなくてもその通りに行動することを学習する」(これは「観察学習」と呼ばれています)と主張し、子どもの行動を変える技法として「他の人がある行動をして、それに良い結果が伴うことを観察させる」技法(「モデリング」と呼ばれています)を活用しています。
 たとえば、「ホラ、お兄ちゃんはもう勉強しているよ。えらいね!」と兄を褒めることによって、ぐずぐずしている弟に勉強を催促するお母さんは、まさにモデリングの技法を用いているのです。
この技法でうまくいくこともあります。

 この考え方の底には「良いモデルさえ示せば、子どもは良い方向に伸びていく。
 そのような自己実現の可能性を持っている」という進行に似た期待感が潜んでいます。
 子どもの可能性を信じることはもちろん必要なことですが、この期待だけで子どもが良い行動をするとは限りません。それはどうしてでしょうか。

 この方法ではもう一つ大切なこと、すなわち「良い行動をしたら、それに良い結果が伴うこと」が抜けているからです。
 子どもが良い行動を実行するかどうかは、行動したら「やったぁ!」という喜びや満足感や達成感を感じることが必要です。
 さらに周囲の人が良い行動を見落とすことなく「○○がうまくやれたね、長い時間続いたね、注意深く取り組めたね」などのように、子どもの行動を認め、「次にはもっとうまくできるよ!」と励ますことが必要です。

 この原則をうまく実践していた例を紹介しましょう。
 それはこの前の戦争の時連合艦隊の司令長官であった山本五十六氏です。
 氏は部下を指導するさいに、「して見せて、云って聞かせて、させてみて、褒めてやらねば人は動かぬ」という言葉を座右の銘としていたそうです。ここで「して見せて」というのは、良いモデルを示すことです。
 「云ってきかせて」とは、良く分かるように説明するということです。モデルを示しても、どのように行動すればいいか分からないのでは、行動は生じないからです。
 次の「させてみて」は、子どもに実際に実行させることです。何事も実際にやってみてはじめて分かるものです。ここまでの3点は誰でも主張していることです。
 山本氏が素晴らしいのは、ここまでで止まるのではなく、さらに「褒める」ことを忘れなかった点です。
 誰でも、何かをやってみてうまく成功し満足感を感じるだけでなく、誰か(とくに尊敬し親しみを感じている人や仲間)に認めてもらえると大いにやる気になります。
 褒めることを忘れていたのでは、いくら親が良いモデルを示していても、後ろ姿だけでは子育てはうまくいかないでしょう。
 子育てにおいて、子どもの何を、どのように褒めるかは子育てが成功するもっとも重要なカギを握っています。


 

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